社交室  (ブルーノ・タウト設計)
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1)眺望と開放感の確保
アルコーブの一箇所を含めタウトの部屋の海側の開口部五箇所は、全て当初、コンクリートの腰壁があった。タウトはこの腰壁をすっかり取り払い、掃きだしとしてより大きな開口部を確保している。
改築したはじめの頃は、これらの掃き出しには雨戸が設けられており、無双窓とされ2枚のガラス戸と霞障子が各々の戸袋に収納され、建具は全て姿を隠くし、開口部全体から海の眺望を確保できるようになっている。ここに眺望と開放性を最大限に図ろうとするブルーノ・タウトの強い設計思想が感じられる。戸袋には片開きの扉があり、内側には吸い付き桟が3か所取り付けられている。よし障子(萩で造られていても)は編戸となり、関西方面では夏場使用し、秋口から和紙障子に取り替えられる。

旧日向別邸の無双窓は、二つと無いほど優れている。
表と裏に同じ材料を使う。
* 現在はアルミサッシ戸が設(しつら)えてある。
* 海側開口部を最大限活している。
* 手すりさえ取り付けていない。
  注)現在、雨戸はアルミサッシに変えられている。

葭(よし)障子
繊細な細工で、見た目には萩が使われているとは思えない。
(萩が使用されていてもよし障子という)。よし(葦の別名)水辺に生えるイネ科の多年草。

(2)照明器具による空間演出   独特な裸電球の羅列
アルコーブ(竹の部屋)から社交室にかけて、天井を区別するボーダー(境界)に煤(すす)竹を吊るし、白熱電球(丸いピンポン球のような)が装填されたソケットを、細い黒竹を鎖にして二列に吊るしている。
煤竹の中に電線を通すと共に、ブリッジの役目を果たしているワイヤーに、夫々のソケットが固定されている。波打つ白熱電球の羅列は見る者に、何かを問いかけようとする風情があり、四つに大きく分けられた白球(豆球)の羅列は、それぞれがシャンデリアとして異彩を放っている。
天井の竿縁から、古民家で使い古されていたと思われる茶褐色の煤竹(すすたけ—煙による)が2列に張られている。(海側49個、山側57個の電球とソケット)
ユニークなのは、細竹(黒竹)を8の字に曲げて、「ひご」で勘合し鎖状にした上で電球とソケットを取り付けていることである。また各々の振れを防止する意図か、両端までワイヤーが張り巡らされている。
デザイン意図はどこにあったのか? 初島近海の漁火・芝居小屋の灯・夜店の灯・京都の灯範をイメージしたのものか?
--- 京都で行われる夜祭の裸電球の羅列は日本風で素晴らしい・・・タウトの日記より --

3)レモンイエローの壁
色漆喰塗り壁は、レモンイエローの磨き漆喰塗りとし、腰壁は桐板が使用されており、両サイドはアールデコ調のモチーフが施されている。造作材はチーク材、幅木は黒色付けとしている。タウト設計のスタッキング椅子による漆喰塗り壁への傷防止のためか、腰壁の高さは85㎝とやや高いものとしている。

*桂離宮の昭和の大改修では、古木の不足から古色付けを採用した。
*古色付け=新木に古木のもつ特有の煤けた色(渋み)を出す方法として用いられる一つの技法。漆や柿渋(柿渋からはタンニン水出る)が使われる。この技法は時間がかかり、物によっては2ヵ月の間、漆と柿渋の塗布工程の繰返しが必要。


*腰壁=腰から下の壁は椅子などで傷をつけられる    
のを防止するため。桐が使用されている
*長押=鴨居の上の横板・桂離宮のような別荘では長 
押はつけない。
*幅木=足が当たりやすく、汚れやすい壁下の保護を
兼ねた。チークが使用されている。

(3)変化と方向性を示す床模様
床は楢材の寄木張りで、天井桐坂の小幅張りとの調和が素晴らしい。

(4)床に呼応した天井模様の妙味
天井の桐板は、アルコーブとはルックス(模様)を変えてデザインされている。社交室としての華やかさは、この美しく変化に富んだ桐の板目模様と、それに呼応したかの様な床の板目模様。レモンイエローの漆喰塗り、腰壁と羅列された裸電球の照明にあろう。

タウトは開口部を最大限活かし、海の青と樹木の緑を取り入れた。この工夫は、社交室に相応しい自然のインテリアとなっている。社交室にはビリヤードや卓球台があったようである。

洋間客室との仕切りは、大和格子風の欄間があり、桐板の襖四枚がはめられている。












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